おぼん 1/2
8月 25, 2008 12:16 pm今年一番の気温を記録した暑い日、瀬戸内海の小さな島へ行った。
軽自動車はエアコンが効かない。宝伝港に車を停めて、汚れた漁船やカモメがたくさんとまっている堤防を眺めながら定期船(小さなボート)を待つ。

空は水色で、雲は大きい。黒いTシャツが汗でもっと黒くなり、ズボンは足に貼付いている。潮風をうけた肌がピリピリして、軒先で子供がビニールプールに入ってはしゃぎ、やっぱりセミがうるさい。ぬるくなった水を飲む。
「あちぃ~」
「ほかに言うことねーんか」
「あ、線路が海まで続いとる」
「船用じゃろ」
「うん」
「小せーころよく行ったよな」
「シンエイズシーな。俺は一回しかいったことねーけどな」
「ベネッセすげーよな、小豆島にもなんか作るらしーよ」
「ほんまー」
そういって写真を撮っている。
「今日は2Gもってきたけーな、とりまくるで」
「ケースに入れた方がええんじゃね」
小さなボートが港に入ってくる。紋章のついた帽子をかぶったおっさんが降りてきて縄でボートを固定してタバコに火をつける。
こういう場所には似合わないオシャレな人たちと、スーパーの袋を持った人たちがおりてくる。
バーベキューの準備をかかえた人たちとボートにのる。
広い海とたくさんの小島を眺めながら、あっという間に港についた。
「あちぃ~」

焼杉の外壁と開け放たれた窓。INUJIMAと書かれたロゴ。JとIが長い。海に向かって大きな窓があり、みかげ石の塀が延々とつづく。
海からの風が気持ち良い。
あまり湿気を感じない。
「風が気持ちえーな」
「エアコンねーんか・・・」
「外よりは涼しいな」
「予約ないんですが入れませんか」
「キャンセルがあるかもしれないのでちょっとここでお待ちください」
「入れますので5分後にまた来てください。水買ってきた方がいいですよ」
地形の模型と建物の模型、解説をじっくり眺める。地球のディテール。
「なんこれ、かっこええな」
「素材の速度か・・・」
「これが環境に対応する建築なん?」
「普遍的ではないね」
「いや、同じような地形はたくさんあるよ、東京のような密集した場所ばかりじゃない。」
「でも同じことやるのは嫌なんだろう?」
「そりゃあね・・・」
「では出発します。熱中症にならないよう気をつけてください。あと写真撮影は許可がない場所では禁止です。では行きましょう。」
「あちぃ~」
「この門錆びとるが」
「そういう素材なんよ」
「ここから写真撮影は禁止です。飲食も禁止なので今のうちに水を飲んでおいてください」
「この壁も錆びとるな」
「・・・」
「このガラリから自然の空気を取り込んで冷たい空気を作っています。施設内にあるガラス屋根の場所では暖かい空気をつくり、煙突効果と建具を開け閉めして建物内の温熱環境を調整しています。じゃあ進みま~す」
「あ、ちょっと涼しい」
「なにこの空間!」
「向こうに光が見えるで!」
「曲がった?」
「二人になった!」
「なにこれ?どうなっとるん?」
「わからん」
「おお~すげ!」
「鏡が斜めになっとるんね」

サンルームを通って、廃墟を見学する。
銅の製造工程で排出される、「たたら」で出来たレンガが積まれている。崩れかけた煙突が自然に溶け込んでいた。
